約 2,307,796 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1322.html
<閑話休題:とある種子の記憶> 私は武装神姫だと皆が言います。 ですが、私は外の世界には出られません。 データの中でしか生きられず、本当に神姫としての身体があるのかどうかすら自分では確認する術を持たない私は、本当に神姫なのでしょうか? 私は・・・ はじめまして、私の名は種型神姫ジュビジーの草雷と申します。 マスター定義が未設定状態のままな為に、どなたが名付けてくださったのかは存じあげませんが、蕾をイメージした名前だそうです。 少々特殊な仕事をさせていただいておりますが、一般的に普及している種型と差異はございません。 ただ一つ、現実世界で動き回ることが出来ない点を除けば、ですが。 お聞きした話によると、私の身体は外の世界で眠ったままだそうです。 ”咲かない花はない” よくあるフレーズですが、芽の出ない種はずっと土の中に埋もれたままなのですね。 土があり、光が射し、水を与えられても、種が偽物なら芽は出ません。私もそういう事なのではないでしょうか。 息抜きの為という名目で実施されるバーチャルバトル。私からすれば唯一他の神姫と関われる貴重な時間です。 今日もデータのみで構築される世界で偽物の空を見上げ、本物と呼んで良いのか判らない力を振るいます。 しかし、相手の方々はいつも不満そうな表情でログアウトされていくのです。 やはり私は普通の神姫とは何処か違うのでしょうか? この事を質問してみると、謝られてしまいました。それ以降は口に出しておりません。 今日から数日、私の起動を請け負ってくださってる方がいらっしゃらないそうなので、その間お休みさせていただくことになりました。 今度目が覚めた時には、外の世界を体験する事が出来るでしょうか。 師匠と弟子
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/449.html
第一幕。上幕。 中学校から家路を急ぐ少年と、彼の肩に、ちょこんと座った金髪の小さな少女。 彼の名前は新堂真人。名はマコトと読む。少女は天使型神姫「アーンヴァル」。名はフェスタ。 二人は顔は決して明るいわけではない。 マコトの横顔には暗い印象があり、フェスタの視線は定まらず、何処と無く虚ろでただ遠くを見ている。それに・・・。 かちゃん。 という音で脚を止める。見れば数歩前でフェスタが落ち、ひっくり返っていた。頭をさすりながらゆっくりと上体を起こしている。 マコトは手を差し伸べて彼女を拾い上げ、胸ポケットに入れようとする。と、両手でポケットの縁を掴んでそれにフェスタは抵抗した。 「肩しか、ヤだ。肩がいい」 「・・・解った」 そっと肩に手を持っていくと、せっせと手だけでよじ登り、フェスタは何とか元の位置に納まった。 彼女には。腿から先が無かった。 ダンスが好きな神姫だった。 家に初めて来た神姫。母が発売日にこっそり買ってきて、マコトに押し付ける形になったのだが。姉も、フェスタを可愛がってくれた。 良く笑い、リズムだけ歌いながら何時もクルクルと踊っていた。どちらかといえば寡黙な彼の肩や頭は即席のステージと化し、いつしか人が集まって来るようになった。フェスタ(祭)という名前も、そのダンス好きな一面から取った物。 バトルは決して得意ではなかったが、そこでもダンスの才能を垣間見せた。純正装備に加えてマコトが買ってきた、大型のライトサーベルでの近接戦が得意・・・いや、好きだった。マコトの適切な指示の元、彼女はジュニアランクの上位に食い込んでいった。 バトル・・・そう、戦場であるにも関わらず。そこでも彼女は舞っていた。 指先まで伸ばし、しなやかな肢体をくねらせ、翼を羽ばたかせて。その完璧な姿勢制御で駆け巡るフィールド。淡い粒子が舞い散る大剣は、ステージに姿を変えた戦場に美麗なる光の帯を引いた。流麗なるは光剣の天使。と噂され、彼女の舞いを見る為に遠征者が来る程であった。 「もっと色んな人に見て欲しいね」 そう言って、彼女は笑っていた。 自慢の神姫だった。 いつものように肩で踊っていた時。弘法も筆の誤りか。彼女はバランスを崩し、落下した。失敗失敗と起き上がろうと身体を起こし。 「フェスタッ!!」 絶叫に近い大好きなマコトの声を掻き消したのはエンジン音。 悲劇は、一瞬だった。 脚が潰れただけ。 メーカーからの補充パーツさえ来さえすれば、直ると思っていた。武装神姫は圧倒的人気を誇る商品だ。順番待ちなのは仕方が無い。 かかった期間は三週間。届いた純正の脚部を神姫ショップで装着。それで全てが解決するはずだった。 「・・・」 ぽかんと口を開けて、フェスタは呟いた。 「何も感じない・・・」 次の瞬間に堰を切ったように泣き叫ぶ彼女を何とか宥め、その日のうちに電車に乗ってメーカーに修理に行った。 何か色々なデータが取られ、様々な脚部が試された。武装神姫の物だけではなく、それ以前の神姫の物も。 その結果は残酷な物であった。 センサー類に異常は見つからず、原因は不明。恐らくは潰れたときのショックか、長く脚が無かった為に運動系制御機構にバグが発生しているのだろうとの事だった。 ・・・だが。 マコトはうっすらと別の理由を感じていた。 それは。非現実的だけれども。 その日から、フェスタは笑わなくなった。 手だけで肩に掴まっているフェスタが、ぼんやりとした目のまま思い出したように言った。 「マコト・・・」 また。はじまった。 「私を、捨ててもいいよ?」 あの日から。彼女は口癖のように言い始めた。 自分を捨ててと。邪魔だろうと。決して目をあわさずに。 「嫌だ」 「マコトはバトルが上手だし・・・頭も良いし」 黄色い髪が彼の歩幅に合わせて揺れる。 「歩けない神姫なんか連れてたら彼女も出来ないよ?」 自嘲が僅かに混ざる声。 「嫌だ」 いつもの返答を、たった一言の返答を繰り返す。数秒の空白。なおもフェスタが口を開く。 「だけど」 「フェスタがいい」 その言葉を聞くと、ふっとフェスタは黙り込んだ。 解っているんだ。喧々囂々と怒鳴りあった、はじめて捨ててくれと彼女が言い出した日。 知らず、口を吐いて出たその一言でフェスタは静かになった。 ・・・きっと、彼女は。この言葉が聞きたいのだ。聞かなくては不安で仕方ないのだと、マコトは解っていた。 いつしかマコトも、笑わなくなった。 何度か落ちそうになりながらも、フェスタを肩に乗せて自宅に到着する。無機質な様式の家。大量に作られた、特徴のない家。 家としても初めての神姫であるフェスタが来て、そんな家も一気に華やいだ。 ・・・あの日までは。 「?」 ふと見ると、家の車庫に見慣れない車が止まっていた。怪訝に思いはしながらも、彼は玄関の扉を開けた。 「おかえりなさいマコト」 聞きなれた声。今は僅かに無機質ささえも感じる。 「・・・お客さんが見えているわよ?」 トレイを持った母親が玄関にぼんやりと突っ立っている息子に声をかける。 「お客?」 我を取り戻し覗き込むと、応接間には身形の良い初老の女性が座っていた。 「・・・誰?」 「神姫研究所の方よ。その・・・フェスタちゃんの事で。話したい事があるんだって」 研究所というワードに眉を顰めながらも、彼は鞄を置いた。 「はじめまして。新堂真人さん。そしてフェスタさん」 初老の女性はその外見同様、固そうな性格を思わせる一応の笑みを浮かべながら言葉を切り出した。 「私、千葉峡国神姫研究所の所長を務めております。小幡紗枝と申します」 差し出された名刺を受け取り、はぁ・・・としか答えられないマコト。 フェスタは机の上に腿を前に投げ出す形でぼんやりと座っている。視線は小幡の方を向いてはいるが、その焦点が合っているかは甚だ怪しい。 「えっと・・・」 返答に困る彼に、小幡と名乗った彼女は金属製のケースを机の上に置いた。 「用件とは他でもありません。彼女・・・フェスタさんについてです」 ちらりと、机に座っているフェスタに視線を移す。 「フェスタにですか?」 「はい。失礼ながらお話は聞いています。残念な事故に遭われたと・・・」 光を照り返さぬ瞳のまま、フェスタが小幡を睨みあげた。 「そこで、こちらを持参しました。フェスタさんは初期ロット。系統が合うという事で」 ケースをゆっくりと開ける。と。 「脚・・・?」 そこには、白いメインカラーに草色のラインが走った神姫の脚が入っていた。 (こんな塗装見た事が無い) どことなくディティールがやぼったいというか・・・古臭い上、表面も武装神姫のようにツルツルしておらず、処理が悪い。 「あの、小幡さん。でもフェスタは・・・」 「だからこそ、この脚部を持参した次第です」 マコトははっと、思わず身を乗り出す。 「この脚なら、フェスタでも動かせるとか!?」 ぴくっと、フェスタが肩を揺らせた。 だが小幡はゆっくりと首を横に振った。 「それは解りません。この脚部はCRZRタイプの物。つまりは、旧式です」 「え?」 マコトの間の抜けた返答。すると、フェスタがポツポツと呟くように言った。 「CRZR・・・タイプ・クラリネット。製造年2031年から2034年。少数生産された会話や通訳を主目的とするタイプであり、発声能力や気候対応能力、外国語発音能力に非常に優れる・・・」 そこで彼女は口を噤んだ。 「その通りです」 「・・・で?」 虚ろな瞳のまま、フェスタは肩を竦めた。 「そのポンコツとも言える脚を、どうしようと言うのですか? 所長さん?」 「フェ、フェスタ!」 乱暴な言い方に慌てたマコトの声を無視して、彼女は淡々と続ける。 「確かに第一弾初期ロットにCRZRの脚部は合います。でも、そのクラリネットタイプの脚は既に試しました。まさかそれをまた?」 小幡は一つだけ頷き、同じ返答をした。 「その通りです」 馬鹿げてる・・・と小さく口の中で悪態を吐き、フェスタは歯を鳴らして再び口を噤んだ。 マコトもまた肩で溜息をついて、目を伏せた。 (きっと・・・フェスタはもう・・・) 試す事さえも、苦痛なのだろう。 幾度試しても、どれを試しても動かない脚。ほんの僅かな期待はその都度に踏みにじられ、その度に絶望のシャワーを浴びて、泣き叫び続けたのだから。 「あの小幡さん、ありがたいお話ですが・・・」 断ろうとしたマコト。だが、その床を見つめていた間にか、小幡は鞄の中から小型のコンピュータを取り出していた。 「失礼ですが。コンセントを貸していただけますか? 充電を忘れてしまって」 「あ・・・はい」 彼はとりあえず頷いてしまっていた。 「その脚部を持参したのは・・・」 手元で立体モニターを搭載したコンピュータにデータを打ち込みながら、小幡はゆっくり話し始めた。 「実は、私の意志ではありません」 「え?」 その意を介す事が出来ず、思わず聞き返すマコト。 「言うなれば『遺志』です。私の、神姫の」 「・・・遺志?」 神姫の遺志? 「フェスタさん」 小幡に頼まれる形でコンピュータの真正面に座らされ、相変わらず虚ろな視線をしているフェスタに声をかける。フェスタはフェスタで反応を示そうともしない。 「貴女は、自分を捨ててくれと。言っているようですが」 目線だけ動かし、彼女は小さく返した。 「それが何の・・・」 「未来を紡ぐ事を、止めようと言うのですか? 『今、ここにいる』のに」 少し強く言う。 紡ぐという単語に疑問符を浮かべ、フェスタは僅かに首をかしげた。 その仕草を見て小幡は悲しげな顔をし、やがて目線を逸らすと、データを再生させた。 「・・・どうか、御覧なさい。これはきっと、貴女へのメッセージです」 『はじめまして。妹であり娘である神姫よ』 モニターに。 腰まで届く草色の髪と、透き通るような銀の瞳を持った、美しい神姫が映し出された。 スペーサージョイントの部分から解るが、武装神姫ではない。もっと古いタイプの神姫。そのスーツカラーはパールと草色に彩られている。 『私はゼリス。プロトタイプ=クラリネット。私はこれより、全ての機構を停止して眠りに就きます』 その自己紹介で放たれた名前。そして続けられた言葉に、フェスタとマコトは息を飲んだ。 聞いてはいた。 去年のクリスマス、ゼリスという名の「死」を選ばされた神姫がいたという事は。それは神姫の意思ではなく・・・。 少なくとも。マスコミはそう伝えていた。 『想い出を守る為に、大切な人との日々を失わない為に。この素晴らしい時間を与えてくれた世界に感謝して』 「・・・想い出?」 ゼリスはモニターの中で。しかし彼女はフェスタのぽつりと漏らした言葉に、小さく頷いてから言葉を続けた。 『私が眠りに就いた後、私の身体をパーツとして、哀しみに囚われた神姫に与えてくださるようにマスターに頼みます。この映像を見ている貴女は、身体の一部を失って嘆き哀しんでいるのですか? それとも生まれながらに身体に不自由を持ち、それの為に涙を流しているのでしょうか?』 ぎくりとしてフェスタはゼリスの顔を見返した。これは録画された物のはず。しかし、その口元に浮かぶ静かな微笑は、確かに彼女自身に向けられている。 『・・・私の身体は、きっと貴女達には旧式でしょう・・・すみません』 少し目を伏せ、悲しげに言う。 そんなこと・・・と思わずフェスタは小さく漏らし、僅かに首を振った。数秒の間の後、再び優しい笑みを湛えてゼリスは語る。 『心が豊かであればあるほどに、貴女は知らず、新しい身体を拒むでしょう』 「!」 マコトとフェスタは共にはっとしてモニターを直視する。 「拒む・・・? 私が? ・・・?」 「フェスタ・・・?」 「う、うん・・・そんな事」 少し自信なさげに下を向いた彼女に、ゼリスは諭すように続けた。 『そう・・・貴女が失ったのは身体だけではなく。そこに込められた『心』そのものなのですから』 「・・・!?」 『非現実的と、非科学的と笑いますか?』 驚いたように顔を上げたフェスタに、くすっと笑う。 『けど・・・私は信じます。信じています』 目を閉じて、彼女は胸に両手をやった。 『・・・『ここ』に、作り物じゃない、心があるという事を』 そこにあるのはCSC。プログラミングによる人工の属性付与機構。 フェスタは知らず、自分の胸に手をやっていた。 ・・・それだけだろうか? ・・・それだけなんだろうか? 熱い、何かがゆっくりと。胸から込み上げてきた。 『受け取りなさい・・・私の身体を使う事で、娘の嘆きが止むのであれば。この『心』を与える事で、妹の涙を拭い、哀しみを癒す事が出来るのであるならば。何故、どこに迷う必要があるでしょう?』 「あなたは・・・」 マコトが思わず声を出すが、小幡が手で制する。 気付くとフェスタはじっとモニターを微動もせずに見つめていた。その空虚だった瞳には確かに光が宿り、涙で揺らいでいる。 『この身体には・・・何者にも代え難い、きっと・・・貴女達が築き歩いてきたと同じ程の『想い』が込められています』 ゆっくりと語りかけるゼリス。フェスタの口が、何か言葉を紡ごうとする。 「・・・っ」 ぱくぱくと。何かを必死で言おうと。何かを伝えようとする。 ・・・涙が、一筋、零れた。 『私の身体は想いで満ちています。私の想いを受け継ぎなさい。私の心と共に歩んでください。きっと、きっと貴女の閉ざされた心も開けると・・・信じています』 フェスタの涙を見て、ゼリスのその笑顔にも一本の涙が伝った。 それはきっと。自分への嘆きではない。 これを見ている、哀しみを抱いた娘へと送る涙。 『・・・笑顔のとき、そして涙のとき。空を見上げ、海を眺め、夢を描くとき・・・心が揺れ、そして『想い』が生まれ出るそのとき。いつでも私は、貴女と共にいます』 フェスタが身をゆっくりよじりながら、肩を揺らせた。目からは涙、唇は震え、首を僅かに左右させる。 『妹達、娘達よ。貴女達を愛しています。・・・これまでも、これからも』 優しさと、ほんの少しの哀しみを湛えた唇が、言葉を紡いでいく。 『そして・・・』 一度、口を噤む。 ゼリスは、優しい母の微笑みを浮かべ、両手を広げるように確かにフェスタに語りかけた。 『想いと共に。未来を、紡ぎなさい』 もう、抑えることは出来なかった。口をついて出る、その言葉を。 神姫。生まれながらのツクリモノの身体。だけど・・・。 「お母さん・・・」 涙でもう満足に前が見えない。フェスタはモニターに近づこうと指を伸ばし、そのまま前のめりにカチャンとその場に倒れ込んだ。 「う・・・うぁあ・・・っ」 手だけで這うように進み、モニターの中で尚も優しげな微笑みを浮かべるゼリスに・・・母に、彼女は腕を伸ばす。 ゼリスの柔らかな視線は・・・不思議と真っ直ぐにフェスタに向けられていた。そのまま、小さく頷いて娘を迎える。 フェスタはようやくモニターに辿り着き、母の姿に顔をすりつけ、泣きじゃくった。 コンピュータのキーボード部を椅子にして座ったフェスタ。背からはケーブルが数本、コンピュータの本体に向かって伸びている。 腿より先に取り付けられたのは・・・美しい草色のラインが走った脚。応接間にはマコト、小幡だけではなく。母、そして大学から帰ってきた姉も集まって、それを見届けようとしていた。 「セッティングは終了しました。さぁ・・・」 小幡が背中からジャックをゆっくりと抜く。小さな手が震えながら膝に据えられた。 ぐっと身体を前にして、力を込める。真綿の上から触っているような感覚しかない。 (でも・・・。違う) 武装神姫の高質合成樹脂でもない。旧式の神姫の脚。しかしそれだけじゃない。 確かに、確かにそこは暖かい。 「ううっ・・・!」 力を込め、ゆっくりと腰が浮いた。 「フェスタっ」 「大丈夫・・・!」 心配そうな声を出したマコトを制し、フェスタは目を閉じ、歯を食いしばった。 (もう一度) いつから諦めたのだろう。それを。あんなに大事だったのに。 (もう一度・・・踊りたい) もう一度。あの時のように。今も鮮明に思い出す自分の姿。喜んでくれたマコトの顔。 本当にいつから・・・夢を見る事さえ止めたのだろう。 「うあっ!」 キリキリと音を立てながら、ゆっくり膝関節が曲がっていく。 (マコトと・・・笑いたいよぉっ!) 彼女の偽りない想い。しかし、それに反して脚は動いてくれない。 (ダメ・・・!) 力が続かず、膝からガクっと崩れかける。 ・・・・・・。 小さな背を、誰かが押した。 確かに感じた、掌のぬくもり。 大丈夫、と。耳元で優しく囁く声。 草色の髪の匂いが、ゆるやかに舞った。 カタカタッと足音を残し、彼女は二歩、進んだ。長く忘れていた脚の感覚が全身に伝わる。じんわりと伝わる、立っているという確かな抵抗。そのまま更に、ゆっくりと二歩三歩と、信じられないといった顔で歩みを進めた。 カタ、カタ。足音は小気味良い音を立てながら、歩くという実感を与える。 彼女はゆっくりと、振り返った。 「・・・フェスタ!」 いつ以来かさえ忘れたマコトの笑顔が、そこに。 「マコトぉ・・・!」 笑顔が零れる。抱き上げられ頬擦りされながら。フェスタは確かに、近くに母を感じていた。 脚は。優しく、暖かかった。 ありもしないドレスの裾を指先で持ち上げるジェスチャー。 腰から礼をすると同時に左膝を曲げ、爪先でコツンとテーブルの天板を叩く。 姉が持ち出したオーディオから流れ出す音楽。 彼女は舞った。 柔軟性の高い武装神姫の高質樹脂の脚とは違う、旧式の、少し硬い合成樹脂の脚。 それは木のステージの上でステップを踏む度に乾いた音を響かせ、周囲の空気を奮わせる。翻す腕。伸びた指。くすんだ金髪が光をはらむ。音楽とステップが奏でるテンポは一つに解け合い、彼女の踊りにリズミカルな拍子を贈った。 やがて舞い終えると、彼女はドレスを直す仕草をしながら、仰々しく一礼をした。 拍手が彼女を包む。 小さな舞姫が顔を上げると、その瞳には涙が薄く湛えられていた。 ・・・。 いつか、貴女に会う時に。胸を張って娘だと言える様に。 未来を紡ぎます。お母さん。 第一幕。下幕。 第一間幕
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/745.html
『モア』と飯島千夏は、取り敢えず落ち着く迄修理センターへ搬送される事になった 『クイントス』のマスターである川原正紀氏がその旨を皆に伝える迄、誰も一言も発しなかった 「この大会はおかしい・・・神姫を大事に思うなら参加するべきじゃない」 川原氏の演説に、皆意気消沈した様に顔を伏せた 「納得出来無い」 だが、異を唱える声が一つ 「そうすればあんたは損はしないかも知れねえが、あんたの神姫への挑戦権を得られない俺達はどうすれば良いんだ?うちの『テスタ』はあんたの『クイントス』に憧れて、それと闘う為に辛い特訓を重ねてきたんだがよォ。川原正紀さん?」 「!?」 藤田隆二・・・『テスタ』のマスターだ 「その通りでござるな・・・自分がチャンピオンだからといって少し調子に乗り過ぎではござらぬか?」 等身大のフブキ・・・ではない、『ホークウインド』のマスター、木原忍だ 胸ポケットで全く同じ顔のフブキが頷いている 「・・・君達は・・・今はそれどころではないのが判らないのか!?」 だが、川原氏の言葉は途中で、意外な者に遮られた 「マサキ、彼らの言う通りだ。神姫が嫌がっているならともかく、戦いを望んでいる神姫が居るのなら、その闘う場を奪うのは貴方の普段の主張を捻じ曲げる事になるのではないか?」 サングラスに蒼いスーツの武装神姫が・・・その眼鏡を外す 「正直、私は別にこの闘いで勝った者だけと闘う・・・等と傲慢な事を言うつもりは無いが・・・」 「この『クイントス』に挑む為にこの一連の闘いを経て君達がさらに強くなってくれるなら・・・私はとても嬉しい。私も一人の武装神姫であるからには、より良い闘いを経験したいという欲求があるからだ。ここでのチャンピオンになる事の賞品がそれだというなら、私は喜んでそれを受け取りたい」 あれが・・・ 女王『クイントス』か・・・! 迫力が違う 実力が違う 器が・・・違う! 残りの全てのマスターと神姫の相談が纏まる迄に、そう時間は掛からなかった 第拾参幕 「かすみ」 次は第六試合・・・つまり、私と『ホークウインド』のバトルだった・・・が 「マスター・・・迷いがあるのか?」 問いに、マスターは首を横に振った 「いや・・・仮に俺が止めても、お前は行くつもりなんだろ?華墨」 ・・・確かに、あれだけ悲惨な『モア』の有様を見た後だというのに、私の心の奥底に熱い火が燃えているのが判る 仮にマスターから撤退を進言されたとしても、『オーナー権限』とかでなければ抗ってしまう気がしていた 「じゃぁ・・・何故だ?いつもならバトル前はもっと喋っている気がするのだが・・・?」 「・・・うん、少し、考えていたんだ」 何を?と首だけでジェスチャ 「仮にこの事故が仕組まれた事態だとして、こんな田舎の大会でこんな手の込んだ真似して、一体誰が得するのかな・・・ってな」 言われてみれば、最初から不自然な部分は多々あったが・・・ 「筺体に細工があったとすりゃ、出来るのは店のもんだけだ。でも、これが原因で店に客が来なくなったら意味が無い・・・厳し過ぎるこの対戦方式は方式で、『クイントス』の望んだものじゃ無さそうなのがさっき判った」 「なんか、誰も得してない感じがしないか・・・?」 得体の知れない超能力を発揮する武装神姫達、田舎の大会にしては陰謀めいた気配がする現状・・・だが 「らしくないな、マスター?仮にこれが誰かの陰謀だったとして、それに対する私達のスタンスは決まっているんじゃないのか?」 最近、私は自らの考えに一人で埋没する癖から少しずつ抜け出しつつある・・・が、代わりに今度はマスターか 「仮に誰かの陰謀だったとしても、神ならぬ私達に出来る事は、目の前の事態から順番に解決していく事だけじゃないのか?大局的な見方も良いかもしれないが、それで結局動かないなら、罠に嵌って見る方が色々見えてくるんじゃないのか?」 危険な考え方だと、自分でも理解はしている。が、今は恐怖と疑心暗鬼に縮こまって身動きが取れなくなる方が何倍も怖かった 何よりも、『クイントス』の演説が利いていた 『私も一人の武装神姫であるからには、より良い闘いを経験したいという欲求があるからだ』 それは、今迄漠然としていた目標に、確たる実体が与えられた瞬間でもあった 私は、あの女王に接近したい その為ならば、多少のリスクは、覚悟しなければならない・・・!! 「私は征くぞ、マスター!今私達には、前にしか道は無い!!」 強引だったか・・・だが、マスターは顔を上げて、私を見て笑ってくれた 「闘わねえとは言ってないだろ?ちょっと考え込んでただけさ・・・」 「そろそろ準備して、さっさとあのニンジャと闘おう。今は少しでも多くの闘争を経験したい!」 「あぁ、判ったよ・・・このバトルフリークめ」 マスターはようやく重い腰を上げ、オーナーブースへ向かった 今回の舞台は和風の城郭内部だった・・・忍者型のフブキと、侍型の紅緒が闘う舞台としてはこれ程の良ロケーションもあるまい・・・少し確認したが、その気になれば屋根瓦の上で闘う事も出来そうだ、御丁寧に空に三日月までかかっていた (さて・・・忍者型で素手主体か。流石に『G』の様な馬鹿げた攻撃力は無いだろうから奇襲で来ると思うが・・・?) 『華墨、気を付けろ!今相手の反応がそっちに真っ直ぐ向かってる!!』 何?真っ直ぐ来たか・・・否、きっと忍者だからデコイか何かに違いない。狭い通路では不利かな? そう思っていた私の予想は、真正面から廊下をまっすぐに走って来た『ホークウインド』を見て完全に覆された。ちょっと待て!幾らなんでもまとも過ぎるだろうそれは!? 見れば『ホークウインド』は全くの素体のまま、ナイフはおろか、『G』の様に補助的な甲冑やマントすら身に付けていなかった (正気なのか・・・ッ!?) 反応は完全に遅れた。首めがけて飛び込んで来た鋭い蹴りを、無様に太刀で受け止めて、衝撃を殺し切れずに真後ろに向かって廊下を滑る 「ぐはっ!!」 しこたま壁に背中を打ち付けて、格好良くない声が漏れる・・・こんな所迄人間の真似をしなくて良い!! 対する『ホークウインド』は・・・ラッシュを仕掛けてくると思ったが、まるで体重が無いかの様に私から5スケールメートル程向こうに着地、突っ立ってこちらを見ている 「『貧弱でござるな」』 多分、今こいつオーナーと完全にハモってた 「貧弱・・・だと?」 「新人で、マスターに戦術勘がない割には元気が良くて根性がある武装神姫と聞いていたから楽しみにしていたのでござるが・・・」 『これならホークウインドが素手でやる迄もないでござるな』 「舐めるなよッ・・・このエセ忍者がっ!!」 今回は腰に懸架していたマシンピストルを抜き放ち、フルオートで7発、ホークウインドめがけてぶっ放す ・・・が 「な・・・っ!?」 残像を残して・・・消えた? 『真横だ華墨ィ!!』 「えっ?」 いつの間にか、私の右手に持った銃はホークウインドの手に握られていた 「『残念でござる」』 爆音、必死になって右の肩当で防ぐ、が、がりがりと削られ、瞬く間に装甲としての体を成さないまでになってしまう 「がァあっ!!」 強引に太刀を振るって距離を置くと同時にリボルバー銃を引き抜いてばしばし三発叩き込む 「ふ・・・っ!はぁっ!!」 今度は、はっきり見えた ホークウインドは数歩助走を付けると、ダッシュの勢いのまま軽く跳躍し、そのまま「壁を走って」私の側面に回りこんでいるのだ (こんな動きが・・・出来る物なのか!?) 途轍もない運動能力の賜物だろう・・・運動能力? 時速100キロ近いだろう拳が私を襲う・・・!考えている暇は無い『G』程の威力は無い分この攻撃は的確に死角を縫って迫る 私は・・・右肩の装甲を切り離した 私の肩という「芯」を失って、あっさりへしゃげる装甲、かがみこむのが遅れていたら今のは相当やばかったかもしれない。現に、兜の角飾りが折れ飛んでいた 左隣に・・・窓がある!跳躍だ・・・跳躍しろ!華墨!! 「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 三度、ホークウインドの拳脚が私を襲う・・・大丈夫だ、装甲がある、一撃では、やられない 今度は被っていた筈の兜が弾け飛ぶ・・・だが、もう私の体も頭もそこには無い 「『広い所なら勝てるとでも!?」』 追い、矢の様に飛び出してくるホークウインド。リボルバーの残り3発を叩き込む・・・が、どうやったのか判らないがかわされてしまった様だ 「ハァッ!ハァ、ハァ・・・」 屋根の上によじ登り、兎に角数瞬時間を稼ぐ 『華墨!ヤツのサイドボードが判った。鉤付きのワイヤーを張り巡らして、「正面に飛びながら横に避ける」とかが可能なんだ』 成る程・・・飛行用のごちゃごちゃした装備を使わずに空中機動が可能なのか。とんでもないヤツだ 少し遅れて、ホークウインドが登って来る 「観念したでござるか?」 片手の手刀で首を掻き切るジェスチャーをしながらホークウインドが呟く 「それとも何か策でも?一応言っておくが、障害物を使わないガチの白兵戦でも今のお主に勝ち目は薄いでござるよ?」 「・・・策・・・か」 バーチャルの空を見上げる 無い訳では・・・無いと思う ただこれは果たして「策」と言えるのだろうか? 『クイントス』の演説が思い起こされる (『より良い闘い』・・・か) 「貴女に尋ねたい事が一つある・・・聞いてくれるか?」 「聞くだけなら」 両手を組み、片目を閉じてこちらを見る・・・背に掛かる月が、絵になる立ち姿だった 「何で素手でやろうと思ったんだ?」 「はっ」と、軽くホークウインドは笑った 「決まっているでござる。この『武器』を拙者達は最強だと考えたからでござる・・・それに」 悪戯っぽく微笑む・・・眼鏡とか似合いそうだと、脈絡無く思った 「それに?」 「折角だから誰もやってなさそうな事がしたかったからでもあるでござる」 不覚にも吹き出してしまった 「笑うのでござるか?」 言いつつ彼女も笑っている 「判った・・・私ももう少し自信を持ってみるよ・・・貴女の様な神姫と堂々と渡り合える様に!」 覚悟は、決まった 「貴女のからだと私の剣と、どちらが強いか、試してみよう」 太刀を、上段に構える・・・この構えで一気にトップスピード迄加速して走れるかどうかは未知数だ、が (自信と・・・誇りか・・・) それは『クイントス』にあり、『ホークウインド』にあり、私にまだ、完全な形では無いものだ 全ての鎧を脱ぎ捨て、走る・・・! 獣の様に 風の様に 光の様に 振り下ろした剣閃は、ホークウインドにとって決してかわす事が不可能な攻撃ではなかっただろう 私の、ある種異常なダッシュ力は、彼女の様な上位ランカーにはもう知る所だろうからだ だが、私は確信していた 彼女なら、必ず私のこの攻撃をその腕で受けに来るだろう事を 侍の精神を持つ忍者型神姫と、忍者の身体能力を持つ侍型神姫 この闘いは 後の私にとって とても重要な闘いになるだろう 惜しむらくは その闘いの結末を、私の本当の実力ではなく ホークウインドの誇りを悪用した 私の薄汚い奸知で告げてしまう事だった 月夜を貫く、硬質な打撃音 案の定、私の唐竹割りは彼女の鋼鉄の腕に防がれ 私はその腕と太刀の接触点を支点に、 月夜に向かって跳躍していた 「マスタァァァァァァァァ!!!」 私の手の中にあった太刀が分解され、消える 殆ど同時に、私の指は引き金を引く動作をこなしていた 爆音は一度だけ、つくりものの月夜に大きく響いた 「ひどい事をして・・・済まなかった・・・今の私では、こうするしか貴女に勝つ方法が、無かった」 月夜の元、私の膝の上で額から擬似血液を流すホークウインドに話しかける 涙を流せるなら、流していただろう・・・否、案外気付いていないだけで、流していたかも知れない 「ふ・・・良いでござるよ・・・あんな見え透いた挑発に乗った拙者の不覚でござる・・・」 それでも微笑むホークウインド、既に、足元から少しずつ、白化して消え始めている 「でも・・・っ!私は貴女の誇りを悪用してッ・・・!!」 「強く・・・なるでござる・・・そうしたら・・・許してあげるで・・・ござるよ」 もう殆ど胸まで消えて、残った片腕で私の顔を撫でる・・・微笑みが・・・堪らなく綺麗だった 「ああ・・・!貴女の魂は受け取った!!私はきっとなってみせる・・・こんな真似しなくても、きちんと真正面から貴女みたいなひとと闘える戦士に!!」 消えゆく彼女の手を握り、私は月夜に吼えた 「見返してみるとおっそろしくクサい光景でござるな」 「なんかのバトル漫画みたいでござるな」 「単にバーチャルで倒しただけだってのに。大げさな奴だなお前・・・そんなキャラだったっけ?」 勝利のコールの後、アクセスポッドから黄昏た表情で出て来た私を迎えたのは、三者三様の凹ましい台詞だった あぁ馬鹿だったさ!でもあの瞬間は何か空気に呑まれてやっちゃったんだよ!あーゆー事を!! その空気を作り出してしまった原因の殆どがまた私にある事実に結局激しい羞恥心を覚える訳だが・・・ 「まぁいいや。見てた連中も外でコールしてるからよ。出て行ってやれよな。『感動的なバトルの立役者さん』?」 意地の悪い笑みを浮かべるマスターの顔はしかし・・・優しかった。何も言わなくても、私の意図を判ってくれた人の、顔だった 「くそっ!!もうどうにでもなれぇぇい!!」 思い切ってこの時ブースから出た私は、やっぱり勇者だったと思う その闘いの勝利の美酒は、恥じらいと照れと、少しの罪悪感で、なかなか本当の味を味わう事は出来なかった でも、何かまた一つ、大事な物を得たのは確かな様だった 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/44906.html
Dの迷宮 メタリング・ラビリンス VR 光文明 (5) D2フィールド:メタリカ ■シールドからこのカードを手札に加えたとき、自分のシールドがなければ、コストを支払わずに出してもよい。 ■ターンのはじめ、自分のシールドが相手より少なければ、カードを引くかわりに山札の一番上を見て、表または裏向きにシールド化する。 ■ラビリンス:自分のシールドが相手より多ければ、自分のすべてのメタリカに「パワード・ブロッカー+6000」を与える。 ■Dスイッチ:ターンのはじめ、このカードの2つ目の■効果を使うかわりに、このD2フィールドをゲーム中で一度上下逆さまにしてもよい。そうしたら、次の自分ターンの終わりまで、自分のすべてのメタリカはすべてのバトルに勝ち、場を離れるかわりにとどまる。 (他のD2フィールドがバトルゾーンに出た時、このD2フィールドを自分の墓地に置く) ラビリンスを使いたかったらこんなことになってしまいました。 これ自身がメタリカを持ってるので、D2スイッチを使うとこれも離れなくなります。 フレーバーテキスト キレイな洞窟だろう?でもそこはメタリカの住まう危険(Dangerous)な迷宮(Dungeon)。踏み入る覚悟はあるかい?---とある探窟家の助言 コンセプト 選択肢 投票 良い (0) 普通 (0) 悪い (0) ? 選択肢 投票 強い (0) 普通 (0) 弱い (0) 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/103.html
【武装神姫】セッション1-1【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm17995262
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/56.html
【武装神姫】セッション1-0【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm17931932
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/109.html
【武装神姫】セッション2-4【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18827180
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/105.html
【武装神姫】セッション1-3【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18179759
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/615.html
剣は紅い花の誇り 用語解説 「槙縞玩具店」 田舎の玩具店 武士達が住んでいる町の中で唯一、武装神姫のバトルが行える店である 店員は本来、皆川と店長の二名、時々店長の娘も手伝っていたらしいが、現在その娘は失踪しており、店長は恐らくそれを探す間皆川に店を任せているものと推測される 「槙縞ランキング」 「槙縞玩具店」に集まる神姫の間で自然発生した地元リーグであり、順位は皆川達がサードのレギュレーションに併せて評価したものの模様 基本的にバーチャルバトル ランカーは華墨、ヌルを含めて初期で21人。強さのレベルには相当なばらつきがあり、特に、一位のクイントスはセカンド中上位級の実力だが、17位以下はエルギール曰く「通常神姫に毛が生えた程度」らしい 傾向として、本来の製品の属性を半ば喪失した様な神姫が多い(合気めいた技を使うジルダリアの『エルギール』や、最早素体が何であったのかを推し量る事にすら意味が見出せない変形MS神姫の『ズィータ』、どんな距離でもほぼ万能に闘える上に、公式のパーツが一切使われていないアーンヴァルの『リフォー』等・・・) 皆川が店長代理になってから、年一回だった「チャンピオンカップ争奪戦」の開催は年二回に増えており、その他イベント大会も多数催されている 「ナイン」 「槙縞ランキング」一桁ナンバーの9人のランカー達を総称して使われる(厳密には、『クイントス』は別格扱いで、それ以外の8名を指して使われる事が多い) セカンドランカーが多数含まる事、マスター自作の改造武装や強化武装を施されている者が多く、現時点の「ナイン」である『ジルベノウ』『リフォー』『ズィータ』の武装には公式パーツが一切装備されていない 「ナインブレイカ-」 「槙縞ランキングチャンピオンカップ争奪戦」の変則的なルールによって、ランキング二桁以上のランカーは全て同列に扱われ、その中で勝ち上がった8名のみが、「ナイン」と対戦する権利を得る・・・言わばナインはシード選手の様な扱いなのだが、それにしても不自然な程に「上位ランカーが保護されて」いる体制である 「ゆらぎ」 神姫の個体差 神姫が身長15センチの人間として作られた以上、同じタイプでも身体能力、性格等にある程度の個性が存在し、製造段階でそういったものが発現する様に、神姫の設計にはある程度のファジーさが設けられている 必ずしも戦闘向きの能力が突出しているとも限らないが、「悪い癖」にあたるゆらぎを減少させる修行、「タクティカルアドバンテージ」にあたるゆらぎを伸ばす修行を行なった神姫は、それだけで結構な強さを発揮する事がある 以上の事から、神姫自身の持って産まれた「資質」そのものを「ゆらぎ」と呼ぶのは明らかに間違った用法なのだが、本作ではその様な表現が多用される 「オップファー」 ドイツの銃器メーカー。神姫用ではなく、普通の拳銃を主に手掛けている エルゴノミクスデザインの優美なデザインのハンドガンが有名で、代表作は.40口径ダブルカァラムの「G40」や、その小型版で、380ACP仕様の「G380d」 「ホーダーアームズ」 東杜田技研の様な、本来人間用のモノを神姫サイズにダウンサイジングしているメーカーのひとつ 主に銃器を手掛けており、12分の1「パイソン」や「エボニー アイボリー」等、実銃フィクションを問わずにやっているようだ 神姫の拳銃は本来、形はリボルバーでもオートマチックでも、使用する弾は変わらない(とどこかの設定でみた)のだが、ホーダーは12分の1「.45ACP弾」とか12分の1「5.56mmコンパクト弾」とか、訳の判らない拘りの元にモノを作っている様だ ニビル達がここの銃を愛用している 「鬼奏(キソウ)」 神浦琥珀作の刀剣を扱っている、神姫用の刃物専門店 経営は実質琥珀の家族が行っているといわれるが、その姿を見た者は居ない(いつも琥珀が店番で、居ない時は閉まっている) ルートは不明だが、世界中の殆どの(神姫用)実刀剣が手に入ると豪語する 琥珀作の刀剣は、彼女にコネが無いのであれば(あっても達成値が足りなければw)正規ルートではここで展示してある一振りずつしか手に入らない クイントスはここで武器を打って貰う事が多い様だ 現在の琥珀作品の在庫状況はこちらから 「オーバーロード」 通常では持ち得ない何らかの超常的能力を備えた神姫、またはその能力妄想神姫 通常、能力に見合った『何か』の代償もかかえており徒然続く、そんな話。 「ゆらぎ」の強烈なものというには過ぎた代物である事が多く(というよりも、「ゆらぎ」の範疇であるものは「オーバーロード」とは呼ばれないだろうが・・・)本作ではしばしば「異能力」等とも表記される事になる 華墨の脚力はオーバーロードではないが、「オーバーロード」の神姫も本作には登場する 「Gアーム」 某正義のヒーローでも、黒光りする昆虫でもない、言わば第3の「G」で現される何かw その力を使った強化武装である 武装と言っても武器の形をしているとは限らない キャロとクイントスの因縁の源、「槙縞ランキング」の真の目的、「バニシングフォー」の秘密・・・いずれのピースとしても非常に重要 「バニシングフォー」 本編第壱幕以前に、マスター共々消息不明になった四体の武装神姫 うち3体は「ナイン」であり、さらにその内2体は所謂「ランキング黎明期のランカー」である 槙縞玩具店では公然の秘密というか、タブー視されている いずれも、「槙縞ランキングチャンピオンカップ争奪戦」の開催中、開催後に消息を絶っている 「人形遣い」 神姫を素体のまま操り、相手を倒すという伝説のマスター レギュレーションから考えると本来不可能な筈なので、都市伝説の一種であろうと推測されるが・・・ 剣は紅い花の誇りTOP?
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2270.html
PROLOGUE 『 もうやだこんなマスター 』 西暦2036年。 第三次世界大戦もなく、宇宙人の襲来もなかった、 2006年現代からつながる当たり前の未来。 その世界ではロボットが日常的に存在し、 様々な場面で活躍していた。 「あの、マスター?」 「ん、どうしたトイレか。 そういうことはバトルの前に済ませておけと――」 「違います! 神姫はトイレなんて行きません! 相手の武装を見てください!」 「武装? ――ふむ、大剣を持っているな。 一応ハンドガンも用意はしているようだが、どう見ても近接格闘型だ。 エル、ここは距離を取っていけ」 「なるほど。 で? どうやって距離を取ればいいんですか?」 神姫、それは全長15cmの フィギュアロボである。 “心と感情” を持ち、 最も人々の近くにいる存在。 多様な道具・機構を換装し、 オーナーを補佐するパートナー。 「どうやってもなにもあるもんか。 近づかなければいいだけだろ」 「なるほどなるほど。 で? 距離を取ったまま、どうやって攻撃すればいいんですか?」 「お前のその武器は飾りか? 投げるなり接近するなりして攻撃しろ」 「武器! 今 『これ』 を指して 『武器』 と言いましたか!」 「それは俺の財力をバカにしているのか? 確かにまともな装備を買ってやれないのは悪いと思っている。 だがそれでもお前に勝利を勝ち取って欲しくて、その武器を選んだんだぞ」 「はぁ……いいですかマスター。 これは武器じゃなくて 『つまようじ』 です」 その神姫に人々は、 思い思いの武器・装甲を装備させ、戦わせた。 名誉のために、強さの証明のために、 あるいはただ勝利のために。 「投げて良し。 刺して良し。 遠近どちらにも対応できるぞ」 「すぐ折れます! 神姫パワーと神姫ボディを舐めないで下さい!」 「はっはっは。 そういうことならほら、200本あるから予備はいくらでもあるぞ。 心ゆくまで折ってくれて構わん」 「どうして……どうして私はこんなマスターに……」 オーナーに従い、武装し戦いに赴く彼女らを、 人々は 『 武装神姫 』 と呼ぶ。 NEXT RONDO 『 どいつもこいつも神姫マスター 』 15cm程度の死闘トップへ